アニメ映画『バケモノの子』を観た!
今、日本で一番注目を浴びてるアニメーション作家といえば、細田守さんでしょう。
その細田守さんの長編アニメーション監督としては今作は5作品目にあたります。
監督・脚本・原作は『時をかける少女』『サマー・ウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』の細田守さん。キャラクターに影のない作画を好み、その分の労力をキャラクターの演技などに力を入れている作家さんです。
出演者は、主役の九太の幼少時は宮崎あおいさん、青年時は染谷将太さん。熊徹に役所広司さん、ほか広瀬すずさん、リリー・フランキーさん、大泉洋さん、津川雅彦さんさんなど。
みなさん、なかなかはまっていていい感じでした。
全体を通してアニメーションに質はとても高い作品でした。
まず冒頭からの演出がとても良い感じです。
武侠映画風の説明から入り、スムーズに人間界やバケモノ界(この映画では渋天街)を説明してくれてタイトルバックに入り主人公の九太の境遇を説明的になりすぎないよう、映像や演出で見せてくれて、ある程度の説明が終わったらすぐにバケモノの熊徹に出会う。滑らかな演出で上手いです。
その他、今作は渋谷を舞台にしている場面が多いのですが、その渋谷の街並をほぼ完コピしているあたりも良かったです。
これをする事によってある種の異化効果が生まれていて、とても魅力のある映像になっていると同時に、渋天街とのわかり易い比較対象ができますので、バケモノの方の世界の「ここではない何処か」な感じが際立っていると思いました。
ドラマ部分でいいますと、九太と熊徹の関係性が良かったですね。
まず二人共それぞれの世界では、はぐれもののアウトサイダーです。
しかし九太の方は一人で生きて行く力が無い。一方の熊徹の方は一人で生きて行く力が有り、九太にその力を教える、この設定が二人の関係性をより強固な物にしているし、熊徹も徐々にその力だけが全てでは無い、という事を学んでいく感じが見ていてグッと来ます。
そしてラスト、その関係二人の関係が、種族や血の繋がりを超えて結実する瞬間の場面はアニメーションの勢いもあって、非常に感動するシーンになってます。
そのラストシーンでけでも満足といえば満足なのです、不満もあります。
僕が思った事は、ヒロインの楓の存在です。
単純に見ていて、このキャラは必要かな?と思いました。
このキャラが九太と人間界を結びつける重要な役になるんで、まあいてもいいんですけど、後半に九太の本当の父親も出てきたりして、なんだか詰め込みすぎな印象を受けました。
個人的に思う細田作品の魅力の一つに、プロットがシンプルというのがあります。
例えば前作の『おおかみこどもの雨と雪』がそれが非常にうまくいった例だと考えていて、『おおかみこどもの雨と雪』は「おおかみこどもが生まれて育てる」以外の要素が少ない作品だったので、物語性が強くなりラストのカタルシスがより強い物になっていたと思います。
今作もヒロインの楓を別のキャラクターに整理、再統合すればラストの感動がより良い物になっていたのではないかと考えます。
もっとも、それがなくても感動はしたので、オススメは出来るんですけど、何か一言言いたくなる映画でも有りました。