実話が元の映画『最強のふたり』を観た!
第24回東京国際映画祭のコンペティション部門で最高賞の東京サクラグランプリを受賞しています。
内容も最高賞にふさわしい出来でした。
監督はエリック・トレダノさん&オリビエ・ナカシュさん。
このお二人の事はほとんど知らないのですが、今作を見てみると確か演出力があって実力がある方だと思います。
主役の大富豪、フィリップを演じるのはフランソワ・クリュゼさん。
首から上しか動かせない演技ですが繊細な演技がとても良かったです。
もう一人の主役、スラム出身の黒人青年はオマール・シーさん。
フランスのコメディアンの方で『ミックマック』『ムード・インディゴ うたかたの日々』といったアート系の映画から『X-MEN:フューチャー&パスト』『ジュラシック・ワールド』など大作にも出演されてます。
いわゆる美談の実話ものはあまり好きではないのですが、非常に楽しめました。
この作品が楽しく観れたのは、「障害という壁を乗り越えて絆を育む」というありがちな話ではなく、「乗り越えるべき障害という壁なんて最初から無い」というテーマが根底が流れているような気がしたからです。
一番筆頭するべきなのは役者陣の演技が非常にすばらしかったことです。フィリップ役のフランソワ・クリュゼさん、そして個人的にはドリス役のオマール・シーさんが非常によかったです。
例えば冒頭の緊張感のある車の疾走シーンからアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「セプテンバー」が流れるおしゃれなタイトルバックの、カラリとした楽しいシーンの時の彼らの表情や、中盤のいわゆる下ネタで仲良くなるシーンの笑い方や喋り方、などで前述した「乗り越えるべき障害という壁なんて最初から無い」というテーマにとても説得力を感じました。
終盤の二人の中が悪くなってしまうシーンも原因が障害によって仲が悪くなる訳じゃなく、あくまで人格と人格のぶつかりが原因のような気がしたのでその部分も好感が持てました。悪い言い方になってしまうかもしれませんが障害という「道具」を介入させず「心」のぶつかり合いで表現してたと思いました。
ただ少し気になった点が2つあります。
1、オープニングが軽快に始まったのでエンディングも同じトーンで、表現した方がよりメッセージが伝わりやすくなるのではないか?
2、最後にモデルになった実在の人物の二人を登場させない方が、逆にテーマがわかりやすくなるのではないか?
というのが気になりました。
しかしながら、この映画がすばらしい事には変わりないし、個人的には沢山の人に見て欲しいと思える映画でした。