ネジマキの映画感想

旧作、新作、関係なく観た映画の感想を書いています。

青春ドラマ『横道世之介』(2013/日)を観た!

観る前は、お涙頂戴系の個人的にはあまり好みではない作品でしたので、不安でしたが結果から申し上げるとかなり楽しめました。

 

 

 

監督は沖田修一さんです。

まだ沢山の映画を撮られている人ではないですが『南極料理人』『キツツキと雨』『滝を見に行く』など個人的には、外れが無い好きな監督さんです。

あと撮影では近藤龍人さんが参加されています。この方は『桐島、部活やめるってよ』や『そこのみにて光り輝く』『私の男』など撮影されてる方でまだ知らない方は覚えておいて損はない方です。

あとは役者陣、特に主役の横道世之介を演じた高良健吾さん、与謝野祥子を演じた吉高由里子さん。この二人のベストアクトぶりは素晴らしいと思いました。

 

 

この映画、テンポも遅いし、上映時間も160分ありますし、観ていて退屈だったシーンも有ったのですが、見終わった後はなぜだかわからないですが、否定する要素があまり思いつかないといった心持ちです。

個人的にその理由を考えてみるに、2つの理由があるような気がしました。

一つはカットの中にある色々なディテールがとても豊かだったという部分です。

例えば前半の高原でのサンバを練習してる二人の後ろに絶妙なタイミングで羊がカットインしてきたり、世之介が実家に帰ってくる時にバスの前を猫が通り過ぎたりと、会話や風景だけでは表現するのが難しいような映画の中の空気を感じさせる演出が、退屈ではあるが観ていて飽きない物に、というか個人的に少しツボに入ってしまいました。

 

もう一つは、この映画は全体構造が登場人物の現在と過去のカットバックで構成されているのですが、その現在のシークエンスの時点で世之介との関係が全て終わっている状態で描かれるのがなかなかクールで好感を持ちました。

その部分が物語全体の何ともいえない「思い出」感をかもちだしていて、少しビターな印象もあり「思い出」を映画で表現する手段として良いと思います。

特に過去シークエンスから現在シークエンスへのカットの少し唐突なつなぎ方が、先ほど申し上げました「思い出」感を強調していて良い演出だなーと思いました。

 

全体にゆるい部分もあるのですが。それ込みでとても可愛い良い映画だと自信を持って言える作品でした。