ネジマキの映画感想

旧作、新作、関係なく観た映画の感想を書いています。

クリント・イーストウッド監督作『ジャージー・ボーイズ』を観た!

アメリカではコケてしまったようですが、日本では評価が高いトニー賞を受賞したミュージカルの映画化です。第88回キネマ旬報では外国映画ベストワンで、町山智浩氏の2014年のトホホワースト1です。僕は映画的な快楽に満ちた大好きな映画です。

 

 

 

クリント・イーストウッド監督、アメリカに残された最後のアメリカ映画監督。

数年前に「俺、映画、辞める」といっていたのに、今作、そして『アメリカン・スナイパー』を立て続けに監督しています。もちろん、映画好きとしては歓迎するんですが1930年生まれですからね、あんまり無理はしないで欲しいもんです。

撮影はトム・スターンさん、ずっとイーストウッド作品の撮影をしている方で、ゴテゴテした映像を取らず、したたかに良い映像を撮影しています。

編集はジョエル・コックスさん。この方もずっとイーストウッドさんの右腕として活躍されてます。『許されざる者』で1993年のアカデミー賞で編集賞も受賞されてますが、本作の編集は過去作の中でも白眉の出来栄えです。

主役のフランキー・ヴァリはミュージカルでも同じ役を演じたジョン・ロイド・ヤングさん。そのほかにはクリストファー・ウォーケン御大も出演しており、エンドクレジットでは素敵なダンスも披露しています。

 

 

1960年代に活躍したロックンロールバンド、フォー・シーズンズをモチーフにしたトニー賞受賞ミュージカルをクリント・イーストウッドが監督する。

これだけで「これは良い映画に違いない!」と思い鑑賞しました。

 

この映画、全てがシンプルです。撮影があくまで物語を映すためだけにあり、照明はあくまでも光と影を表現しゴテゴテしてません。

その中でも僕が痺れた部分は編集です。観客を物語に誘導するためだけに、カットを切って、時には時間を大幅に飛び越え、「いいじゃんこれで、わかるでしょ?」と言わんばかりに説明を排除しています。

もちろん映画は物語自体もシンプルですし、ある程度知名度のある原作ミュージカルもあるので、過度な説明は無用ではあるのですが、個人的にはこのシンプルな編集に映画的な快楽を感じました。

 

特に素晴らしいのがラスト。物語内の時間が大幅に飛び、主人公たちのとあるライブシーンで、それまでしたたかに物語を語ってきたそれら、カメラが元気に動き出し、照明が派手になり、ライブが終わると同時にスパッとカットが切れ映画が終わる。この切れ味、リズム。全てが素晴らしく思わず泣けてきました。

エンドクレジットに当たる部分のミュージカルシーンもこの映画を見てきた人にとっては最高のお土産で楽しかったです。

 

確かに、人によってはカタルシス不足に見える部分があるかと思います。特に元のミュミュージカルを見ている人はそう感じるかもしれません。僕も本物は見ていないのですが、確かにユーチューブなどでミュージカルのダイジェストを見る限り「これは超楽しそうだなー」と思います。ただ今作のように、あくまで静かに物語を語り、ラストの1点にカタルシスを集約させるのも映画的な手法として有りなのではないかと思います。

とても上品な口当たりの良い映画でした。